創作のための映画と読書まとめ

当ブログは「良き創作は良き鑑賞から」をモットーに、鑑賞した映画と本についてまとめておく目的で設立されました。同志よ集え!

実写&劇場版「映像研には手を出すな!」を見た感想|アニメ派の人もけっこう楽しめました。

結論からいうと、日本の実写版としてはクオリティーが高く、面白いと思いました。

 

良かった点を3つ、悪かった点を1つあげたいと思います。

 

 

良かったところ

 

1 主人公陣3名の演技力。

 

アニメ版の声優の演技を参考にしているのだと思いますが、似せてくれていたので、違和感を感じずキャラを飲み込めました。話し方やイントネーションがそっくりでした。

 

それでいて、俳優陣のオリジナリティもしっかり残っていたように思います。

 

特に浅草氏が良かった。アニメ版は暴走妄想キャラに特化していましたが、実写版は声も高く、かわいい成分が多め。人見知りしているところが、だいたいかわいい。「のだめカンタービレ」の、のだめに近いキャラクターでした。そのせいで、かわいい枠の水崎氏のキャラが弱まってしまっているように思われましたが。

 

金森氏も、アニメ版より笑うキャラというか、表情豊かなキャラになっていて、これもまた、ありかなあと思いました。

 

 

2 オリジナルのギャグパート

 

基本的には、アニメでもやっていたロボ研との共同制作の回なのですが、ちょこちょこオリジナルの要素が挟み込まれていて、面白かったです。部活の統廃合のところとか、文化祭前日夜の生徒会との闘いとか。

 

他にも細かいギャグがたくさん仕込まれていたのですが、作品世界を壊すことなく、コメディ成分増量で来ていたと思います。まあ、ギャグを面白く思うかどうかは人それぞれ価値観が大きく違うので、一概に言えませんが。

 

アニメ版ほど、ロボ研との協力はありませんでした。アクション決めたりとかは、なし。でも、それは仕方なしかな。

 

 

3 VFXを駆使した浅草ワールドの表現

 

「映像研には手を出すな!」のだいご味のひとつである、浅草氏の世界観爆発のシーン。それが、VFXのきれいな映像で再現されていました。乗り物とか、ロボットとか。実写ならではの映像でした。

 

他にもいろいろ見たいなと思いました。水の中のシーンとか特に。

 

逆に悪かったところ

 

1 最初の総集編のところ

 

初見でも見れるようにまとめを最初に流していたのですが、長かった。謎に「羅生門」のパロディもしていたので、余計に冗長に感じました。キャラ紹介程度にとどめて、さっさと本編に入ってほしかった。

 

特に、雨宿りをしている3人の演技が、最近の日本ドラマにありがちなオーバーなものだったので、げんなりしました。「わからねえ!」って何回も言われて、しんどかった。しかもこの3人、このあと絡んでこないし。

 

謎の台風のシーンも、ドラえもんのパロディなんでしょうけど、いるかなあ。

 

 

2 舞台挨拶いらなかった(ここは無視してください)

 

極めて個人的な感想になってしまうのですが、舞台挨拶が長すぎた。主人公陣が乃木坂のメンバーだったみたいで、もちろん需要があったのだと思いますが、僕は全然興味がなかったので、ひたすら我慢してました。我慢した後での長い総集編だったので、キレそうでした。そのあとがまだ面白かったので、助かりました。

 

あと、化粧の濃さが本編と全然違って、ぜったい化粧薄いほうがいいのに、と思いました。

 

あと、百目鬼氏がドーラン塗ってたって知ったのだけ収穫でした。本編と全然雰囲気が違いましたね。あとは特に……内輪ノリを見せられてしんどかったです。まあ、こればっかりは個人的な失敗です。

 

 

まとめ 浅草氏かわいいよ浅草氏

 

かわいい浅草氏を見れるだけで値打ちがあると思います!!!!

 

全体の構成も、総集編を除けばテンポも良くて、いい感じでした!!!

 

『ワイルドサイドほっつき歩け  ハマータウンのおっさんたち』の感想と考察|政治と生活と海外を混ぜたエッセイって面白いんだなあ

章題の通り。EU離脱など、いろいろな社会的問題を抱えた英国における、労働者階級の人々の生活を、筆者独自の目線から語ったもの。

 

お国は違えども、隠れた階級社会であることや、世代間の争いがあることなどは、日本に似ている。ただし、日本と違って、政治や社会について、ひとりひとりがきちんと問題意識をもっているのが面白い。(だからこそ、世代間の争いの火種が増えているようにみえる)

 

労働者階級の人たちは、粗野で無教養というイメージがつきまとうが、みなやさしさと信念をもった人間なんだということがうかがえて、どこかほっこりする。その人のキャラクターを、筆者独自の観察眼で掘り下げられていて、すごい。

 

それでいて、政治が絡むからか、シリアスな感じもある。この作者ならではの作風なんだろうなと思う。

 

というか、政治×生活×海外なんてテーマで書ける人がそもそも少ない。

 

創作研究という観点から見ると、あまり見ない破天荒なおっさんたちがたくさん登場するので、参考になりそう。

凪良ゆう『流浪の月』の感想と考察|これが読まれる今、長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか』も読まれるべきだ

ネタバレ含みます。

 

この本、感想を言いたくなりますよね。 さすが本屋大賞。

 

さて、感想と考察に移ります。

 

 

ざっくりとしたあらまし

 

『流浪の月』は、ロリコン大学生に誘拐され、性的暴力を受けたと「世間から思われている」女の子が主人公の物語だ。実際には、大学生は少女を保護した立場であり、本当に性的暴力を働いていたのは、女の子の住む家の中学生男子だった。女の子は、家族が離散し、親戚の家で暮らさざるを得ず、その立場の弱さからも、被害を訴え出ることができなかった。――家に帰りたくない。そんな思いから、大学生のもとへ転がり込んだのだ。

 

 しばらく幸せな時間があった。久しぶりの平穏。安心して眠る喜び。しかし、幸福は長く続かなかった。事件が明るみに出て、大学生が少女を誘拐したという誤った情報が流布した。二人の情報は、永遠にネット上に残り続けるのだった。

 

と、いうのが序盤の流れ。

 

 

注目ポイント1 色

 

特筆すべきは、色の描写が巧みであること。

 

1つ目は、家族との思い出は、カクテルのような透き通った色合いで表現されている。カタカナの多様で、グリーンの美しさが際立っている。

 

2つ目は、対比的に表されている、親戚の家での灰色、どろどろの、濁った色だ。鮮やかな思い出の色と対比されることで、いまがどん底であることが強調される。

 

最後に3つ目ロリコン大学生の色は、「白」。すべてを漂白し、ニュートラルの状態に戻す色だ。

 

子供の目線から、色を繰り返し描写することで、我々読者が想像する世界が鮮やかに色づく。

 

注目ポイント2 「主題と構成」

 

もうひとつ巧みであったのが、「真実は誰にも見えていない」ということ。

 

被害者である主人公がどれだけ、「大学生は優しかった」と訴えても、信じてもらえない。主人公だけが、大学生のやさしさを知っている。読者も、なんでわかってやらないんだ!と、もどかしく思うのだが……

 

じつは、主人公でさえ、大学生のもつ「真実」にたどりついていないのだ。

 

ここがミソだ。誰も真実に気づいていなかった……

 

そして、さいごに驚愕するしかけが、冒頭のレストランの場面。高校生二人が少女誘拐事件の犯人が捕縛されている動画を流している。それを聞き流しながら、引っ越しの相談をする男女。読者は、一度目は男女が仲良く相談しているようにしか感じない。しかし、物語を読み終わった後に読むと、全く違う様相が現れる。

 

やはり、真実は見えていないのだ。

 

時系列をばらばらに配して、この主題を読者にも体感させているのはすごい手腕だなと、うなりました。

 

関連図書

 

ここで紹介しておきたいのは、長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか』です。

 

本書は、世間をにぎわし、震えさせ、怒りの感情に染め上げた凶悪犯罪事件を取り扱っているノンフィクションだ。

 

筆者は、この世間の憎しみを一身に受けた殺人者たちの心理鑑定を行う臨床心理士。

 

筆者は、犯罪者たちが幼少期に、虐待を受けるなどの壮絶な家庭環境にあったことをつまびらかに分析し、なにが原因で犯罪者がうまれてくるのか具体的に明らかにした。

 

「オタクだから犯罪を犯した。」

「性的嗜虐性をもつ異常者だから犯罪者になった。」

「即刻死刑にするべきだ……」

 

マスコミはそのように切り取り報道する。世間はそれを盲信する。

 

しかし、犯罪者たちのヴェールをはがした奥には、いままで虐げられてきた人としての顔がある。彼らは、世間にも、自分自身にも絶望しきっている。だから真実を語ろうとしないし、罰を望んでいる。真実は見えないままだ。

 

『流浪の月』に描かれるような、真実が明らかにならないまま犯罪者となり、世間から永遠に疎まれ続けるという人たちは、けっしてフィクションだけの存在ではないと考えさせられる。

 

『流浪の月』で心を痛めた方はぜひ、手に取ってみてください。

『移動都市/モータル・エンジン』の感想と考察|美麗CGで送る王道スチームパンク

アマゾンのレビューがひどいことになっていたので見ました。

 

結論から言うと、そんなに悪くないです。映像が壮大なので、映画館映えしそうです。

 

ざっくりとしたあらすじ

 

舞台は、科学文明が量子爆弾によって滅びたあとの世界。人々は移動都市という、でかいキャタピラのついた、移動する街に住んでいる。ハウルの動く城の洋バージョンイメージするとよい。少ない物資を取り合うため、大きな街が小さな町を取り込んでいく。

 

そんな大きな街の偉い人が、実は滅んだ文明の破片を集めていて、量子爆弾をつくって世界を支配しようとする。それを阻止する主人公とヒロイン、その他協力者。

 

それが大きな流れで、その間にボーイミーツガールであったり、ヒロインの育て親であるアンドロイドに追いかけられたりする。

 

作品を彩るものたち

スチームパンクの世界観である。その他、ロストテクノロジー、ポスト・アポカリプスが世界を肉付けする。権力闘争、陰謀、というのも要素のひとつだ。

 

序盤の流れは『セブンスタワー』に似ている。序列が決まっていたり、主人公が外の世界を知らなかったり、外の世界に追い出されたり。そうやって閉じた世界から出て、本当の世界を知るというお決まりの流れ。

 

外の世界は、人身売買、人肉、機械の体、空中都市といった、重厚な世界観を感じさせるアイテムが散りばめられている。

 

残念ながら、重厚な世界を感じさせるだけで、そのひとつひとつを掘り下げられてはいない。おそらく、原作の要素を少しずつ入れ込んだのだろう。

 

批判の多くは、「ありきたり」もしくは「掘り下げが不十分」

まあ、的を射た意見だと思います。ただ、それだけでこの映画が面白くないかといえば別。

 

上記のストーリーであったり、詰め込まれた世界観は、そりゃあ、確かに寄せ集めでしょう。ある社会の要人が

破壊兵器作って、それを主人公が阻止する話。ありきたりです。そういうもんだと割り切りましょう。そして、美麗なCGがありますから、映像を楽しみましょう。あと、雰囲気も。

 

掘り下げが足りないというのも確かに。でもね、原作のある映画って、だいたいそうなるから。そんな中では、けっこうテンポよくすすんでいたし、主要メンバーの掘り下げだけはちゃんとしていたと思う。原作では重要キャラっぽいやつが、あんまり出番なかったりすることもあったけれど、そこは想像で補いましょう。

 

まとめ

・いうほどひどくない

・ありきたり→王道、掘り下げ少ない→要素が多い。リフレーミングしよう

・映像キレイ、テンポよし。スチームパンクのカッコいいメカを見たければこれを見よう

・世界観は作りこまれている。しかし、映画では再現しきれていない。想像で補うか、原作読もう。

・創作的に言えば、王道の勉強になる。トップが陰謀働くとか、なまっちょろい男が、悲惨な過去を持つ女を気遣うとか。

 

それなりに楽しめました。

 

 

【文房具】PILOTのボールペン(ニードルチップ)を愛してやまない。【雑記】

社会人になると、シャープペンシルより、ボールペンの方が、使用の機会が増える。

 

勉強するにしても、ペン先が滑るボールペンの方がはかどる(気がする)。

 

そんなわけで、この一年くらいボールペンをいろいろ買ってきた。

 

結論から言うと、ニードルチップのタイプが書きやすい。好きだ。

 

書いた字が、なんだかオシャレに見える。書いた字がオシャレに見えるというのは割に大きなことだと思う。

 

結論に至る経緯は以下のとおりである。

 

一時期、ジェットストリームが天下を制していたように思う。長いものに巻かれるタイプである私は、例にもれずジェットストリームを何本も買った。じっさい、書きやすかった。じゅるじゅるした書き心地であった。ぬるぬる書けると巷では言われていたが、じゅるじゅるという擬音がよりふさわしいと思う。

 

特に難点があったわけではないが、変化を求めた私は、ぺんてるのエナージェルを買った。クリック音が心地良かったからだ。ぐいっと押し込む感じがよい。ここで、するすると書ける感覚を味わった。紙面を滑るのだ。たくさん書くときには、これが良い。

 

ただ、この時点ではペン先がニードルチップだからよい、とは考えてなかった。このあと、PILOTのある製品にであってから、これしか愛せない体になってしまった。

 

その製品とは、「フリクション ポイント ノック」である。

 

ボールペンの難点は、なんといっても消せないことだ。そこで、消せるボールペンという画期的な発明は、文房具界隈を大いに騒がせた。ただ、発売されて間もないフリクションには、多くの課題があった。

 

しかし、「フリクション ポイント ノック」にもはや死角はない。今までのフリクションインクの「なんとなく薄い」、書き味が「なんとなく固い」を完全に克服していた。しかも外観が「かっこいい」のだ。さらに、八色もある。使い分け放題だ。書き味も良い。なぜならニードルチップだから。時代はニードル。さあ、レッツニードル。

 

そんな中、最も惹かれた色が、ブルーブラックである。

 

名前の通り、黒に近い青なのだが、これがほんとに「オシャレ」なのだ。オシャレからかけ離れた私が言っても説得力がないかもしれないけれど信じてほしい。インクでこんな「オシャレ」ってすごくない?と思った。興奮しておしっこでそうになった。そんな一品なのだ。

 

いい雰囲気のカフェに敷かれているマットなどは、きっとこんな色であろう。壁紙とかもこの色。

 

とにかく、このボールペンで書くだけで、なんとなくおしゃれなノートに変わる。自己満足度が急上昇なのだ。勉強において、これはすごく大事なことだ。たった250円でモチベが上がる。だから私は三本買った。

 

そういうわけで、PILOTのフリクションを買おう。

 

フリクションじゃないブルーブラックが欲しい人は、ジュースアップを買おう。これも二本買った。

 

細さは0.4がいいと思う。

一年の計は元旦にありといいますが

今週のお題「2020年の抱負」

 

元旦過ぎて、はや三日。

 

この調子で、2020年もガンガン消費されていくのだろう。

 

いまも、ビリーアイリッシュのインタヴュー動画見てる。

 

とってもキュート。たまらんですな。この人があのグロ映画『ブライトバーン』のエンディングを歌っている。

 

 

www.nemurigona.com

 

いわゆるギャップ萌えなのかもしらん。

 

今年から社会人になったので、まったく更新できない。

 

しばらくは仕事優先でがんばろうと思う。ちなみに国語教師である。まだ暗中模索という感じ。

 

ただ悲しいのは、『キングオブコメディ』の記事がグーグル検索のトップだったんだけど、『ジョーカー』の影響で落ちてしまったこと。

 

 

www.nemurigona.com

 

更新もしてなかったし、仕方ないけれど。

 

教育関係の本しか読んでないからね。しばらくは、そんな感じ。こんな内容でも更新していいのかしら。

 

一年の抱負は分からない。とりあえず今年度を無事乗り越えたい。それから、この休みの間に積み本を消化して、鬼滅の刃を読みたい。

 

 

『ブライトバーン 恐怖の拡散者』の感想|これ以上世界について考えるのが嫌になる、そんな映画。

 YouTubeを見ていると、いやというほど見せられた本作の広告。

 

目に刺さったガラスの破片、高速移動で襲ってくる少年、泣き叫ぶ母親。これは是非見なければ、と思った。

 

ポケモンの発売と本作の上映とを楽しみにして、この一週間頑張った。

 

まさか、こんなに血を見る羽目になるとは思わなかった。

 

けれども、見終わった後には、奇妙な充足感があった。

 

まるで、ふわふわの羽毛に包まれた鳥の皮を割いたら、予想通りにグロテスクなピンクの肉が出てきた時のような安心感。

 

やっぱり、スーパーマンみたいな特別な人間が地球にいたら、そうなっちゃうのが普通だよね、みたいな。

 

ストーリーをかいつまんで説明する。ネタバレ注意。

 

 

不妊で悩む夫婦がいた。ある夜、衝撃と共に宇宙船が墜落した。

 

宇宙船には赤子が乗っていた。母親は、それを天の施しだと思って育てた。

 

ブライアンと名付けられたその子は、素直な聞き分けのよい子として育っていた。

 

しかし、12歳の誕生日を迎えたその夜から事態が一変する。

 

謎の言葉に導かれ、力に目覚めたブライアン。芝刈り機を何メートルも投げ飛ばす。刃物は彼を傷つけることはできない。高速で移動できる。空を飛べる。目からは熱線が発射される。

 

次第に、ブライアンは自分が特別な存在であること、その他の人間は、育て親も含めて自分より下等であることを認識する。

 

それからのブライアンは自分の思うがままに力を振るう。なによりも嘘を、裏切りを嫌った。しかし、自分の行為がそのきっかけを与えていることには無頓着である。12歳の、自分が特別だと思い込んでいる少年さながらに、自分の行いについて客観的にみることができない。まして、ブライアンは実際に「特別」である。

 

女の子の手を握りつぶした。女の子の母親を殺害し、腹に穴をあけて磔にした。叔父の車を空中から落として殺害した。

 

父親はそのことを知ると、ブライアンを撃ち殺そうとした。そこには葛藤があった。愛情を注いできた息子である。しかし、このまま放置しておけばまた死人が増える。意を決して、息子の頭を銃で撃った。

 

しかし、ブライアンは無傷であった。父親は熱線によって頭を焼かれた。

 

一方母親は、まだ息子の無実を信じていた。だが、いよいよ言い逃れできない証拠が見つかる。ブライアンは、母親が、自分のことを疑っていると知る。ブライアンが母親を襲う。救援に来た保安官ふたりが、残虐に殺される。一人は高速タックルによってミンチに、もう一人は壁にたたきつけられて血だるまにされた。

 

母親は、唯一ブライアンを傷つけた宇宙船の破片を持って、息子に変わらぬ愛と、信頼をささやく。ブライアンは、良いことがしたい、本当だと母親に訴える。

 

抱き合う二人。だが、母親の手には宇宙船の破片が握られていた。振りかぶる。しかし、止められてしまう。驚愕の表情のブライアン。彼は、叫びながら母親を抱き、空へ飛んだ。血まみれの母親と、穏やかな顔の息子が向き合う。

 

空で手を放された母親は、地上に向かって落ちてゆく。

 

 

……というように、とことん救いがない。

 

この映画は、見せたいものがはっきりしているし、それ以外の描写はできるだけ簡潔に、テンポよく展開する。

 

魅せたい場面、要するに残虐な殺人シーン、恐怖を与えるシーンに関しては、じっくり、濃く演出されている。

 

もし、スーパーマンのような超人的パワーを持ったティーンエイジャーが、自分を少しでも不愉快な感情にした相手に、好き放題暴力をふるったらどうなるか。中二病の妄想をそのままに実現させたらどうなるか。

 

だれも止められはしない。愛情も、言葉も、実に空虚だ。

 

暴力こそが自由で、残虐こそ世界だ。美しい形をした石をひっくり返したところに、密集した虫たちがうごめいている姿を、まじまじと見せられたような気持ちになる。

 

これでこそホラーだ、と僕は思う。

 

血みどろの、ただ残酷なホラー映画を観たい方は是非。