創作のための映画と読書まとめ

当ブログは「良き創作は良き鑑賞から」をモットーに、鑑賞した映画と本についてまとめておく目的で設立されました。同志よ集え!

【感想・評価】『リアル人生ゲーム完全攻略本』人生というクソゲーをいかに効率よく攻略するか

 人生はクソゲーである。

 

 とある神ゲーマーはこう言った。理不尽なランダム要素、多すぎる選択肢、見えないパラメーター。セーブもロードもできやしない。まごうことなき「クソゲー」と言えるだろう。

 

 思えば、この本との出会いもまた、クソであった。少し余談に付き合ってほしい。

 

 本屋にいると、便意が起こる。ほぼ確実、と言っていいだろう。しかも、これは私個人の体質ではなく、多くの人たちが経験するらしい。さらにさらに、この謎の現象の原因がはっきりわかっていない、というのだから驚きだ。科学は何をしているんだ。

 

 今回読んだこの本も、便意をこらえながら、本棚に目線を走らせていたときに発見した。長年の経験により、この「本屋的便意」は確定エンカウントするものの、それほどの脅威は持たないことを私は看破していた。だから、私は便意よりこの本の吟味を優先した。

 

 私は軽々と肛門をしめ、「それ」が外に出て悪さしないよう封印していた。しかし、「本体」を押さえつけても、その手下……「ガス」の方は漏れ出てしまう。私は周囲を確認しながら、その気体を放出しようとした、そのとき。グレーのベレー帽と赤いマフラーをした美人が、こちらにやってくるではないか。バカな、じじくさい新書コーナーにこんな美人だと。その美しさに目を奪われた私は、うっかり封印をゆるめてしまい、闇の奥から「本体」が姿を見

 

 と、余談が長くなってしまったがとにかく、うんこを我慢しながら見つけたのが本書である。(心配ご無用、本体は漏らしていない。ほんとだよ。)『リアル人生ゲーム完全攻略本』。素晴らしいタイトルではないか。ゲーム世代としては気になる存在だ。最近ではネットが発達しているので、攻略本を買う機会はなくなってしまったのだが。

 

 本書の構成を述べると、前半にこのゲームの設計者「神」によって「このゲームの遊び方」が説明される。「スキルを増やして、寿命をお金に変換し、幸福点を集めよう!」。私は素直に「なるほど!」と思った。人生の意味とは?という創世記以来の謎に対し、端的に答えが示されている。この神ならば、本屋に行くと必ずうんこに行きたくなる理由も教えてくれそうだ。

 

 「趣味もいいよね!自分のタイプも計算にいれてね!」とも書いてある。「タイプ」とは、自分が人を蹴落として金を稼ぐことに幸福をかんじるか、人のために身を粉にすることに幸福を感じるか、という幸福点を稼ぐ上での倍率のかかり方の種類を指す。要するに、自分にあった生活をすれば、あなたはハッピーになれるということだ。

 

 「ふむふむ!じゃあ、後半はチュートリアル(義務教育)中にやっておくべきこととか、その寿命を幸福点に変えるためのジョブ選択の方法とか、スキルの取捨選択及びその効率の良い取り方なんかを教えてくれるんやろうなあ。。。」

 

 と思ったのだが、後半は「前半にでてきた説明書、現代の複雑化した世界じゃ通用せんからw」といった文章から始まり、「こんな大型イベント(結婚、金融危機、自然災害など)起こるかもだからきいつけてなw」といったことがつらつらと書き連ねられているのだ。

 

 「なんかおもてたんとちがーう!」

 

 ポケモンでいえば、まず6vメタモンを手に入れましょうとか、マイクラだったら木を切りましょうとか、スプラトゥーンだったらヒーローモードクリアしましょうとか、そういうやつじゃないんですか!と、私は思ったわけで。

 

結論を言うと、本書はそういうやつではない。

 

 選択肢がありすぎてなにをすればいいのか分からない人生というゲーム。娯楽だけなら腐るほど転がっているので、あっという間に心だけ少年のおっさんになっていたというプレイヤーはごまんといる。ざっくり、学校行って勉強していい大学に入って就職して結婚して……みたいなルートは頭にあるけど、そのために日々動くということはしない。けれども、時間は勝手に進んでいく。中断セーブもロードもできない。だから、そのざっくりとあるものを、具体的に、何歳までにこれしろ!とか書いてあれば、それこそ攻略本と言えるのではないのか。

 

 しかし、この本には「結婚、離婚、子ども、老後」といったライフイベントと、「日本国財政破綻、自然災害、戦争」などのビッグイベントに備えよといったことだけが書いてある。

 

 結局のところ、本書から読み取るべき私の要望への解答は、「人生において、模範解答のような攻略法は提示出来ない」ということなのだ。ポケモンで言えば上位勢のパーティをパクれ!とか、スプラトゥーンで言えばまずはスシ使え!みたいな例を示すことは出来ない、と。ほぼ確定と言えるイベントだけ紹介して、「これらに対する対抗策を各自見つけておきなさい」としか言えない、ということなのだ。

 

 自由すぎる人生というクソゲーに模範プレイなんて示せるわけがない。少なくとも、本という媒体で、名前を出してそれをするのはリスクが高い。無責任だとも言えるだろう。一応、本書ではキリスト教や仏教が、その模範プレイを示す攻略本だった、と位置づけている。しかし、現代において、これらの本に忠実に生きて幸福になれる人がどれくらいいるだろう。

 

 昔なら、世間や親の敷いたレールがあって、ある程度それに則ったプレイをしていれば安泰だった。しかし、今はそうではない。自由度は上がり続ける一方だ。その割に、システムは複雑化し、先行プレイヤーが有利なように書き換えられている。

 

 となれば、我々がするべきは、このゲームの基本に立ち返るということになるだろう。

 

それは、「幸福になれ」というゲーム目標である。

 

 「落とし神」と呼ばれた伝説のゲームプレイヤーは現実をクソゲーだと言っていたが、そのクソゲーでは、神ゲーをたくさん遊ぶことが出来る。先に死んだものは、これから先の人類の進化を見ることが出来ない。

 

 私たちは、今の自分に与えられたものを最大限使って、少しでも多く幸せになるために行動すべきなのだ。せっかく、プレイ権を与えられたのだから。

 

 ……と、読みながら思ったことを述べていたら終わる雰囲気になってしまった。そもそも、本の感想はどこにいったのか。

 

 本書はざっくりとしか見えない人生というゲームをおおつかみで把握するのに便利だから、一読してみたらいいと思うよ。そこから色々調べてみようって思うかもだし。おわり。

 

 

余談。近所の本屋のトイレに、こんな貼り紙があった。

 

「詰まりますので、大きい方は流さないでください」

 

……本屋のトイレがそれでどうするんだ。

 

しかし、意外と本屋のトイレに行列はできない。みんな我慢しているのか?我慢は体に良くないよ。