創作のための映画と読書まとめ

当ブログは「良き創作は良き鑑賞から」をモットーに、鑑賞した映画と本についてまとめておく目的で設立されました。同志よ集え!

【感想】岸本葉子『エッセイの書き方 読んでもらえる文章のコツ』 懇切丁寧、しかも分かりやすい入門書

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スマホ時代、誰もが気軽に言葉を発信できるようになりました。しかし、ただ言いたいことを言っているだけでは、その他大勢の言葉に埋もれてしまい、誰の耳にも届きません。

 

ですから、自分の言いたいこと、書きたいことを、相手を読みたくなるようにする工夫が大事になります。

 

文章には色んな形式がありますが、「自分の体験」を話し、そこに「共感」を得たいと思うならば、エッセイという形が最適でしょう。

 

私自身、日常生活において「面白いなあ」「腹が立つなあ」「不思議だなあ」など、様々な出来事、考えに出会います。それを言葉にしたい、という欲求がありました。そんな中、目についたのが本書です。

 

今回紹介する岸本葉子さんの『エッセイの書き方 読んでもらえる文章のコツ』は、自分の体験を文章にして伝えたい!という思いを、「読まれる」エッセイの形にするための方法を教えてくれています。

 

エッセイを書く、そのための技術と心構えを懇切丁寧に、しかも実際に岸本さんが書いたエッセイを例にとっているので、分かりやすいです。

 

エッセイを書きたいのに、熱い思いをうまく言葉にできない、という方におすすめします。

 

 

 

 

 

 

内容の紹介

 

本書の構成

 

本書は、

序章 エッセイを書くとき、頭の中で起きていること

第一章 テーマは連想の始動装置 ――「私」と「公共」の往復運動

第二章 頭に働きかける文 感覚に働きかける文 ――無意識を意識する

第三章 リスク回避と情報開示――「自分は他者ではない」宿命を超えて

第四章 文を制御するマインド――「筆に随う」はエッセイにあらず

終章 ひとたび脳を離れたら

となっており、それぞれの章に小見出しがついています。

 

第一章では、エッセイとは何か、エッセイにおけるテーマとはなにか、から始まり、実際にエッセイを書く上で、どうやって書き始めるのか、構成上の注意点など、エッセイを書く上での大枠、最重要ポイントを押さえます。

 

それから、第二章、第三章、第四章と、エッセイを書くためのテクニックが解説されています。

 

第二章では文章の種類を「枠組みの文」「描写」「セリフ」と分け、それぞれについて解説します。

 

第三章では、読者に読んでもらうため、飽きないためのテクニックが解説されています。

 

第四章では、文章自体をより良くするための方法について書かれています。語感や比喩などです。

 

新しい章に入る前に、前章のまとめを書いてくれているので、前後のつながりが分かりやすく、頭にすっと入ってくる構成になっていて、さすがプロだな、と思いました。

 

エッセイとは何か?

 

岸本さんは、エッセイの基本要件を「自分の書きたいことを、相手が読みたいように書く」と定義付けます。

 

もちろん、自分がなにか言いたいからこそ、文章を書くわけですが、文章と言うのは読者がいなければ、ただの独り言になってしまいます。「伝えたいことを伝える」という目標が達成されません。

 

だから、読者を想定し、「相手が読みたいように書く」ことが必要になるのです。

 

では、どうすれば読みたくなるのか。その要件として挙げているのが、「読みたくなる文章であること」「興味の持てる題材であること」です。

 

「読みたくなる方法」については、本書に書かれたテクニックを知り、練習すれば、身に付けることができます。

 

対して、「興味の持てる題材であること」については、一朝一夕で身に付くものでもありません。岸本さん自身、普段の生活の中で、他者に興味を持っている題材を探しているとのこと。

 

毎日、その日の終わりにでも、なにかいいエピソードがなかったか、思い出してみる。そういった心掛けを重ねていくことが大切です。

 

起承転結の「転」で、人をうならせる

 

一般的に、起承転結を用いて、文章を展開させます。論文などでは「結」が重要なわけですが、エッセイにおいては「結」よりも「転」が大切だと言います。

 

エッセイを読んでもらって、「あ、そう」となってしまうのは、よろしくない。だから、裏切りの「転」の部分で、読者に「へえ~っ」となってもらう、これがひとつのポイントです。

 

そのためには、自分が「へえ~っ」となったエピソードが大事になってきます。

 

そんなエピソードが用意できれば、あとは見せ方だけ。その方法は、実際に岸本さんが書いたエッセイを例に用いて解説しています。

 

感想

 

日々の生活の中で、面白かったこと、悲しかったこと、怒ったこと、色々あると思います。

 

それを誰かに伝えたい、共有したい、共感してもらいたい。そういうときに、文章はエッセイという形をとります。

 

でも、どうすればエッセイが書けるのか、読んでもらえるものになるのかが分からない。

 

そんな思いを、豊富な経験と洗練された手順で解説してくれています。

 

経験に裏付けられたテクニックを惜しげもなく披露し、自分語りにもなっていません。

 

なによりも丁寧、それが非常に好感と信用を与える。そんな一冊でした。

 

私の場合、どうしてものっぺりとした文章になるので、「転」に気をつけて書くというアドバイスだけでも、大きな前進でした。

 

テクニックがたくさん紹介されているので、消化しきるのか時間がかかりますし、なにより、実際に書いてみないと身に付くものでもないですから、練習あるのみですね。

 

いくつか書いてみたんですけど、本書の通りできているかと言えば……(笑)

 

 

 まあ、いくら理論だけ知っていても、使えないと意味がない。使えるようにするには書いてみるしかない、ですね。

 

それでも、これから頑張って書いてみよう!となるきっかけになるはずです。

 

エッセイに挑戦しようという方の、初めの一冊にお勧めします。