創作のための映画と読書まとめ

当ブログは「良き創作は良き鑑賞から」をモットーに、鑑賞した映画と本についてまとめておく目的で設立されました。同志よ集え!

『カメラを止めるな!』の魅力|たった1つのアイデアと2つの面白さ【感想と考察】

本作は、一切の前情報なしで見なければ、一気につまらなくなるでしょう。

 

だから、未視聴の方は、今すぐ本記事を見るのをやめましょう。

 

視聴済みの方は下へスクロールしてください。

 

 

 

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(ネタバレ防止のための空白)

 

 

 

 

『カメラを止めるな!』において、たったひとつのアイデアが、ふたつの面白さを生み出しています

 

たったひとつのアイデアとは、「画面及び情報の切り取り」であり、それが生み出す面白さとは、「謎解きのカタルシス」と、「神の視点から見る滑稽さ」です。

 

以下、詳しく見ていきましょう。

 

〔目次〕

 

 

 

 たったひとつのアイデア

 

『カメラを止めるな!』の面白さのひとつは、なぞなぞの答え合わせをしたときのような、あるいは手品のネタ晴らしをみたときのようなカタルシスにあります。

 

それを成立させるためのアイデアが、下の画像です。

 

 

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これは、メディア批判によく使われる画像です。

 

メディアの流す情報は、意図的に切り取られたもので、実態ではない、ということを風刺しています。

 

本作は、これをうまく利用して、エンターテイメントに仕上げたものです。

 

そのために、一本の作品を見せてから、その舞台裏を本編として見る構成になっています。

 

つまり、手前の切り取られた映像を流してから、後で答え合わせとして本当の現場を見せる、ということです。

 

これにより、なぞなぞと答え合わせが可能となり、カタルシスが生み出されるのです。

 

 

作品の構成と、答え合わせによるカタルシス

 

まずは、一発撮りの(ように見える)ゾンビ映画を、30分ほど視聴する。

 

これ単体の出来はすこぶる悪い。しかし、まだ席を立ってはいけない。

 

私は、三流ゾンビ映画にいらいらしながら、これをどう挽回してくれるのか考えていました。

 

ゾンビが撮影による偽物なのか、本物かどうか見分けがつかなくなるみたいな感じを予想していたのですが、これくらいの発想は見事に乗り越えられました。

 

ゾンビ映画の質の悪さは、後のカタルシスのための伏線張りなのです。

 

とても長い前振りで、しんどい時間にはなってますが、改めて考えると、構成上最低限の時間に収められていたと思います。

 

その後、時間が一か月前まで巻き戻され、ゾンビ映画がどのように撮影されたか、描写されます。

 

ここからが本編です。

 

先に見たゾンビ映画は、一見まとまった、普通の映画に見えますが、実際はそうではなかった。

 

撮影現場はトラブルの連続でした。

 

しかし、その場しのぎの試行錯誤で、なんとか生放送一本撮りを成立させていく。

 

先に見たときには、違和感程度のおかしさだったけれど、舞台裏を見ることで「なるほど、だからこうなったんだ!」と納得し、カタルシスを得る。

 

違和感のなかった場面でも、「このセリフのはそういう裏があったんだ」と分かって、面白い。

 

まさに、手品のネタ晴らしと同じものが味わえるのです。

 

私は、監督が俳優たちに本音をぶちまけるシーンが好きですね。あのシーンで、一気に面白くなりました。

 

 コント調の現場

 

答え合わせによるカタルシスとは別に、ドタバタそのものが面白いんですよね。 

 

現場はてんやわんやなのに、放送を見ているプロデューサー陣は、のんきに「まあ、ええやん?」という風に見ている。

 

我々視聴者は、先にプロデューサーと同じ目線で見ていたわけですが、今度は舞台裏のゴタゴタを見ながらなので、そのギャップが面白くてたまらない。

 

いわば、コントを見ている感覚になるわけです。

 

私が見ていた映画館では、度々笑い声が聞こえてきました。

 

観客全体の一体感もまた、面白さに一役買っていると思います。

 

吉本新喜劇とかが、こういう感じなのかなと思います。

 

周りが笑っていると、こっちも楽しくなってきますよね。

 

まとめ

 

謎解きによるカタルシスと、コント仕立ての面白さ。

 

この二つを成立させているのが、たったひとつのアイデアです。

 

「表向きはこうだけど、真相はこうだったんだよ」

 

人間が大好きなやつですよね。「実はこうだったんだ」ってやつ。

 

手品のネタバレ然り、陰謀論然り、裏設定然り。

 

人は納得したいのです。「なるほど!」と思わせられたら勝ちです。

 

それをコント調でやったのだから、面白いに決まっている。

 

余談になりますが、謎の提示と解消は、最近の流行でもあります。

 

「なぜ化け物が大量発生したのか?」が大きな謎として提示され、その場の危機を乗り越えながら、真相にたどり着く。

 

本編(大きな謎)とサブプロット(その場の危機回避)が自然に配置されるので、大きな謎のアイデアが秀逸であれば、面白い作品になる。

 

このような構成は、知りたいという知的欲求をくすぐるのも魅力でしょうね。

 

『カメラを止めるな!」に関しては、知的欲求によって引っ張る力はないものの、種明かしによるカタルシスは群を抜いていました。そこが一番の魅力と言えるでしょう。

 

最後に、エンディングで本当のメイキングを流すのも評価点になります。本当の本当まで発表することで、本当の本当の本当の存在をほのめかす……というのは深読みしすぎですね。

 

とにかく、前評判通りの面白い作品でした。前情報をできるだけ見ないようにしていた甲斐がありました。

 

未視聴のままここまで見てしまった方は、まだ間に合います、ぜひ劇場で観ましょう。

 

 

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